私にとって、理想的芸術家像とは理想的百姓である。つまり、芸術家のあるべき姿とは最高の農業者の姿と同義である。そしてそれは、普遍的真理に基づいたものである。
百姓には作物カレンダーがあるように、芸術家の創作カレンダー、つまり時節、環境等すべての状況判断と観察、そして深い直観による洞察によって創作を行う指標を持たねばならない。
真の芸術家とは、時代の呼吸を読み取り、感受して、深い思索と直感によって作品に肉化できる者のことである。
現在に生きる人間として、私が実感している現代社会というものは、情報の嵐と洪水で危険極まりないものだ。一歩間違えれば、足元をすくわれ、荒波にもまれて溺死してしまうであろう状況だ。
このカタストロフ的現実社会の荒波を乗り越えて、目指すべき彼の地にたどり着くには、確かな指標、羅針盤が必要だ。それは、そのまま自己との壮絶な戦いを意味する。
「決して、他を羨んではならぬ。お前はお前の道を行くより他にない。羨望の心にとらわれその道行けば、それは、もはやお前の道ではない。自己の内なる磁石を信ぜよ。それは、確かなる彼の地への羅針盤。人生の意味性の大地に辿り着くための必要不可欠のツール。そのツールを磨き確かなものにすること。それは、平凡な百姓の知恵から学べることなのだ。」
